「ほんま……あれは今思い出しても恥ずかしいわ」
「あはは……あれは本当にごめんね。私、どうかしてた」
今思えば、本当にあの時の私はどうかしてたと思う。
だって、専門学校一年目の男の子にプロポーズみたいな恥ずかしい言葉を並べて、あれだけの視線を浴びて……もしあれが正気だったなら、私には羞恥心なんて一欠片も無いのだろう。
「結婚に焦った三十路のおばさんがどうかしたんかと思ったわ」
「はっ……⁉︎ 今、二十六ですけどぉーー!あの時はまだ二十四です!」
「そうやっけ?」
「そうですぅー!」
若くて可愛い子がするみたいに頰をぷくっと膨らませる。しかし、こんなことしてみたって真央くんは何も感じないだろう。
相手がこのツンツンした冷たい真央くんだし、それに、私は二十六歳。もはや三十路。
それでもって、あの最悪な出会いからこうして真央くんと付き合えているのは、私のアピールがしつこくて真央くんが折れてくれたから。……仕方なく、なのだ。
全く愛情を感じないわけではない。寧ろ、愛情はちゃんと感じている。だけど、それは真央くんの優しさだ。
仕方なく付き合ってるとはいえ、実際付き合っているのだから、優しくしないと可哀想だと思ってくれているのだろう。
ツンケンしているけれど、そんな優しさを持っている。そんな真央くんだから、私は想い合っていないと分かっていても彼から離れられない。

