「あ、頭……あげて下さい」
「は、はい」
「佐藤くん、ちょっと来て」
女の子が後ろを振り返り、誰かを呼んだ。すると、後ろの方からこちらへと歩いてきた可愛らしい男の子。どうやら、彼が〝佐藤くん〟らしい。
そして
「あ、あの……この四角いチョコレート作ったのは、彼、佐藤くんです」
この美味しいチョコレートを作った子なんだ……‼︎
「あ、あの…!このチョコレートね、すっごく美味しかったよ!多分、今までに食べた中で一番美味しかった!私、味とかそんなに分かる方じゃないはずなんだけど、とっても美味しかったの!ありがとう!」
ショーケースに乗っかりそうな勢いで、ショーケースの向こう側にいる佐藤くんに身を寄せようとした。
そんな私に彼は若干……いや、かなり引いていた。だけど、止まらない。言葉にした途端、もっと気持ちが高ぶって、自分で自分が制御できなくなった。
「私、キミの作ったチョコレートなら毎日食べられる!キミの作ったチョコレート、毎日食べたい!私に毎日チョコレート作って……‼︎」
ここで、辺りの視線は完全に全部私へと集まった。
隣にいたはずの友人も、もう私なんて赤の他人であるかのように私から離れていた。
……まぁ、そりゃあそうか。何やってんだ、私。
なんて、ここで反省したって時すでに遅し。私が大恥をかき、たくさんの視線を集めながら学校を去ったのは言うまでもない────。

