「楓音、入るぞ」 ガチャっと不穏な音を立てて部屋に入ってきたその男は、不気味なくらい自然に私の身体をなぞってゆく。 「最近、ご無沙汰だったから。いいだろ?」 疑問符なんて付けても、結局この男は有無を言わせず私を抱く。 それでも少し身体を強張らせたのは、最後の抵抗だったのかもしれない。 そう。 血の繋がった兄への、最初で最後の抵抗。