陽くんの字ってこんな綺麗だったんだ。
知らなかった。私だって知らないことあるんだ。陽くんのことなら何でも知ってるって思ってたのに。
授業が終わり、私は有紗と部活に行った。
でも、何かいつもみたいに集中できない。
どうしても陽くんのあの態度が気になって。

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「どうしたの凛子。元気ないじゃん。」 
「そう?元気元気!」
私のウソつき。ほんとは頭が陽くんのことでいっぱいなのに。
そのまま何気なく部活が終わった。
サッカー部はまだやってる。私は窓の外から眺めていた。あっ、陽くんだ。
「すごい。」聞こえるか聞こえないかわからないぐらいの声で言った。
陽くんがサッカーしてる所初めて見たかも。練習が終わった片付けだ。もうそろそろ下に下りよう。
外はまだ、春の風が少し残っていた。これから夏になっていくんだ。この街も、人も。
問で待っていると、ふと陽くんらしき人が見えた。なんか気まずいな。
あれっ、女子生徒といる。誰だろう。あっ、ビンタされた。そのまま女の子は走って逃げていった。その光景に見とれてると、
「ごめん、遅くなった。」「お疲れ様。」
「じゃあ、帰ろっか。」
そう言って私は遥輝くんの自転車の後ろにまたがった。しばらく無言が続いた。
キィー。急に自転車が止まり。私も降りた。すると、いきなり遥輝くんが、
「俺、お前のこと好きになった。俺と付き合ってくれないか。」突然の告白。私が戸惑っていると、目の前にバスが通りかかった。やばい、中にいる陽くんと目が合った。
「ここでは別に答えなくてもいい。でも、凛子の本当の気持ちで答えてくれ。」そう言って遥輝くんは私を抱き寄せそっとキスをした。人生初のキス。
それは突然訪れた。
私は結局、その場で返事をすることはなかった。遥輝くんは私を家まで送ってくれた。どうしよう。こんなの初めてだから。