毎日聞く音楽がある。その曲は言葉にできない気持ちを変わりに音にしてくれる気がする。でも彼は違う世界にいて、会うことなんてできない。一般人と芸能人の壁は大きい。そう思っていた。今までは。


東京都の新宿は時間なんて関係なく人で溢れ返っている。田舎なんて行ったことないけど、きっと快適なんだろうな、なんて思う。

「宮坂さん、佐々木さん、お昼入っちゃってー。」
入社もうすぐ3年目。メンズファッションブランド『pretty』は年々経営規模を拡大し、今年の春からは海外に進出する予定だ。ドラマや映画の服も最近は『pretty』が主流になってきている。ここ渋谷店は本店で特に中高生から20代女性まで人気である。
「もう3月だってのに寒いねー。」
同期で友人の佐奈がコートのボタンを閉めながら嘆いた。
行きつけの喫茶店はランチタイムが終了し、私達が来る頃にはだいたい空いていた。
「もう27だよ。彼氏とかつくんないの?」
いつものパスタセットを頼んだところで、紗奈かま話を切り出した。紗奈は去年、結婚したばかりである。
「今は仕事が楽しいからいいの。彼氏とか。」
「今は!?そんなんじゃダメ!」
「何がよ。」
「杏優は可愛いからもったいないよ。職場でも評判いいし。いっそのこと職場結婚しちゃえば?」
紗奈の話が止まらなくなったところで料理が届き、一旦休戦。
「シェアしよー。」
返事も待たずに紗奈は、私のパスタを半分、取り皿にのせていた。
「そういえば朝比奈先輩が杏優のこと好きってみんな、噂してたよ。」
相変わらず情報網がすごい。
「どうせなら同期がいいなー。」
「注文多いなー。」
紗奈は言うことはきついけど、なんだかんだよい友達だ。
「杏優、今日夜勤でしょ?」
「うん。」
夜勤は1人ずつ週に1回、交代でやっている。店を閉じても掃除や準備で終電ギリギリのことがおおかったりする。

結局今日も12時近くまでと終電ギリギリだった。
「お疲れ様でした。」