「しゅ、んっ…!」
切なそうに瞳を揺らす舜を見たらなにも言えなくなってしまった。
どうして、そんな顔するの?
ーーーー全てを諦めたような、瞳。
最近の舜はあたしの知ってる舜じゃない。
舜は昔から素直だった。
感情は素直に出していたし、優しくて王子様みたいだった。
中学生になれば舜は彼女を作っていた。
その度にあたしは……泣いていた。
「舜…」
「…怒らないんだ?」
「舜がこんなことするには理由があるんだろうなって思ったの」
「え?」
「舜は、人を傷つけるような人じゃないから。優しいもん、舜は」
「ゆ、め…」
あたしはあたしであのキスをなかったものにしたくなかった。
そんなあたしのわがままを見せかけの“優しさ”で変えた。
あのキスを舜に謝られたりしたら、それこそあたしはとても惨めになる気がした。
あたしのあの言葉は舜を救うためじゃない。
ーーーあたし自身を守るための言葉。
「……ゆめ」
「なにも言わなくていいよ、舜。大丈夫だよ。」
お願いだから、謝らないで。
お願いだから、なかった事にしないで。
「まりかには言わないから、絶対」
「っ、ゆめ」
「な、に…?」
「もう一回していい?」
「な、んで…?」
「俺の中でキスしたいって思うのゆめだけだから」
「なんでそういうことっ…んんっ…」
最後まで言わせてくれない強引なキス。
まりかがいるのに、友達なのに、頭でわかっていても心が受け入れてしまう。
こんなに優しく啄むような甘いキス。
自惚れてしまう、勘違いしてしまう。
ーーーーあたしのこと、少しはすきなの?なんて、ね。

