「ただいま」
「あ!舜!いいとこに〜!」
「…やな予感しかしないんだけど?」
「ゆめちゃん今日1人なんですって!だからうちに泊まるから迎えに行ってくれない?」
「悠にぃは?」
「今日はズル休みして2人でデートよ!全くもう〜!」
そう言いながらニヤニヤしてるじゃないか、母さん。
なんで、今このタイミングで泊まりなんだ。
「いや、でもさ…」
「何あんた、ゆめちゃんになんかあったらどうするの?!1人でいて空き巣入ったら!ひゃー!!」
「…っわかったよ」
母さんの妄想癖が始まった。
でも、俺もそう言われて想像して嫌だった。
空き巣が入って、ゆめが見つかって、ゆめは可愛いから襲われる。
そんなの耐えられない。
「…部屋は?」
「は?あんたの部屋に決まってんでしょ」
「は?…高校生なんだけど。」
「だから何よ?今更なんか起こるっての?中学生の時から寝てるのに?」
母さんは知らないだけだ。
俺の隣で寝てるゆめに何度俺が欲情したか。
その度にどれだけ辛くて我慢したか。
ーーー今思えば俺、昔からそうじゃん。
昔からゆめを女として見てた、好きだった。
それを無理やり“家族みたいなもん”だと思い込ませて。
今考えれば、ゆめ以外の女に欲情したことなかったくせに。
「あ。でもあんた彼女いたんだっけ?」
「っあぁ…」
「ま、“幼なじみ”だもの。いいわよね?」
「…別に、いいけど」
わざとらしく幼なじみの部分を強調して言う母さん。
そっか、姉ちゃんも母さんもずっとわかってたんだ。
俺の気持ちを。
ーーー俺だけが、気づかなかったんだ。
「そうと決まれば迎えに行ってね?ゆめちゃんのこと」
「は?学校まで?」
「もちろん!雨降ってきて、ゆめちゃんだもの〜傘持って行ってないでしょ?」
「たしかに。…わかった、7時くらい部活終わると思うから迎えに行く」
「任せたわよ〜」
こんなに早く他人として会うことになるとは。
いや、俺はもう他人だと思えない。
ーーー気づいたこの気持ちはもちろん隠し通すよ。
ゆめとこれからもいるために。

