「俺はまりががすきで付き合ってるんだから、すきな奴がいるわけないだろ。」

「舜ちゃんっ…だぁーいすき!!!」












そう言って抱きついてくるまりか。


いつも、そうだ。

抱きついてくるまりかを抱き返せない俺。

ーー理由はわかってる。

ゆめが頭の中でチラつくから。


この状況をもし見られたら?とか。

ゆめも彼氏ができたらこんなこと…とか。



いつまでもいつまでもゆめは俺の頭の中から出て行ってはくれない。











「…舜…」

「ん?」

「舜もぎゅっとして…?」

「…こんな道端で恥ずかしいから」

「道端じゃなかったらぎゅってしてくれるの?」

「……あぁ」

「ウソつき。まだしたくないんでしょ?あたしと。あたしばっかり舜のことすきなんだもん!!」












声を荒げるまりか。

俺はここまで追い詰めてた?

いつも適当な理由つけてまりかと触れるのを避けてきた。


ーーもう、ゆめとは他人か。




ふと、気づいたように思い出した。









「…まりか」

「なに…っん!」














強めに名前を呼べば案の定顔を上げたまりか。


俺は、わかっててキスした。

甘い声を上げるまりか。


でもなんだか、キスしてるのに甘いキスのはずなのに冷えていく。


俺の心の中が冷えていくんだ。





ーーーーゆめ、俺は何してんだろうな。











「っ…しゅ、ん…」

「まりかといるといつもこーゆーことしたくなるから避けてたのに」

「舜ちゃんになら何されたって嬉しいよ?」

「……っかわいいな、まりかは」













素直なまりか。

天邪鬼なゆめ。

嘘がペラペラでる俺。

ゆめには優しいアイツ。






ゆめしか頭にない俺はまるでゆめ依存症みたいで。


こんなんじゃなかった。


離れて、突き放されて気づくなんて最悪だ。


ゆめの存在が俺の中でこんなにも大きかったなんてーーー……。