ーーーーガラッ…




「…ゆめ」

「…こ、へい…?」

「部活始まってんのに来ねぇから来たら…」

「っ、ごめ…すぐ用意するね!」

「目、こすんな!」













航平の大きい声に体がビクッとする。


あたしを見る航平の瞳はなんだか切なげに揺れていて。

でもあたしには何故かなんてわからない。

ーーだって舜しか見えてないから。

この時のあたしは舜しか見えてなかったから。



ソッと航平が親指であたしの涙を拭う。


何度も何度も伝う涙を拭ってくすぐったい感覚なのにどこか心地いい感覚。













「ゆめ」

「な、に…?」

「…俺のいないところで泣くな。」

「えっ…?」

「1人で、泣くなよ。泣きたい時は俺を呼べよ」

「…航平…」

「辛い時も話聞いて欲しい時も笑いたい時も…全部全部俺を呼べよ」

「ど…して…」











どうして航平はそこまであたしに優しくしてくれるの。

どうしてそんなに優しいの。…甘えちゃうよその優しさに。



いつの間にかあたしは航平の腕の中にいて頭をポンポンと撫でられる。

一定的なリズムがなんだか安心して、航平の匂いでいっぱいになりながら…あたしは舜を思いまた泣く。










「俺はなんでもゆめと共有したい。ありきたりだけどさ…悲しみは半分に喜びは2倍にって言うだろ?」

「ふふっ…航平…うぅ…」

「泣くか笑うかどっちなんだよ、ゆめは」










そう言って笑う航平の笑顔は大好きだ。


くしゃくしゃにして笑うその笑顔は太陽みたいに眩しい。


耳まで真っ赤にして言っていた“悲しみは半分に喜びは2倍に”って言葉はありきたりだけどとても好き。


だってその通りだと思うから。

航平が居てあたしと一緒にあたしの悲しみを共有してくれている。

これだけで、あたしの悲しみは半分になる。

航平航平…ありがとう、見つけてくれて。











「もう、1人で泣かないよ」

「おう」

「航平…ありがとう」

「俺はなんもしてねぇーよ。ほら、早く用意して部活行こうぜ」

「うんっ…!」

「とりあえずこれ。…少しは腫れ引かせとかないとな」











そう言っていつから用意してたのかわからない冷たい濡れタオル。

こんなのいつ……。

でも何よりも航平の気遣いがとても心を温かくしてくれた。