パタパタと階段を下る音。
ーーー舜が、離れるっ……
胸が張り裂けそうに痛いのも、涙がとめどなく溢れるのも今日だけ。
「ふっぅぅ…しゅ、んっちゃ…ん」
もう気安く呼べない名前。
今だけは、呼ばせてね?
今だけは、泣かせてね?
君の前では絶対呼ばないから。
絶対……泣かないから。
泣いたとしても困らせないよ。
何度だってウソをつくよ。
君が笑ってくれるなら。
いつかまた“ゆめ”って呼んでくれるためなら。
君が幸せならあたしはそれでいいの。
「すき…すきだよぉ…しゅんちゃ、ん…うぅ…」
もう伝えることも告うことさえできない思いを今だけ、声に出させて。
あたしは舜を好きだった、大好きだった。
叶わない思いだと知りつつも舜の隣にいるのが居心地良かったよ。
もう、この気持ちは捨てるから。

