「ゆめー、部活届けだした?」
「今出しに行く!航平は?」
「俺もまだ。一緒に出して一緒に行こうぜ」
「うん!ありがとう」
「ちゃんと男バスのマネージャーにしたよな?」
「航平がしつこく聞くからそうしたよーもう。」
「んだよ、いいだろ?一緒に部活してぇもん」
「“もん”とかかっわいい〜」
「うるせーよ!」
照れたように笑う航平が可愛くて面白くてついからかってしまう。
優しい航平は許してくれて。
部活に入れば、舜といる時間も減って考えなくなるだろう。
もうわかりきってるの。
あの2人は両思いだと。
ーーーーこんな恋、やめてしまいたい。
「ゆめ」
「っ、舜!?どうしたの?」
ドアの方から呼ばれて振り向くと舜がいた。
まるで、怒ってるような不安なような顔をして。
でもあたしはもう違うわかってる。
こんなことじゃ自惚れない。
舜は幼なじみが自分のところから居なくなるから心配なだけ。
そう……幼なじみだから。
「忘れ物でもしたの?って…もう放課後だけどね?」
「帰るぞ」
「あっ、ごめん舜。ちゃんと説明してなかったけどー…」
「いいから!帰るぞ!早く用意して出るぞ!」
あたしの言葉を遮って、舜は机からあたしのカバンを持って歩いてく。
「舜!!まって!!」
「待たない。…変な事言うに決まってんだろ。」
「変な事ってなに!?あたし何も変な事言わない!止まって!」
「学校出たら、止まる」
「舜っ…お願いだから…止まってよっ…!!」
「っ…泣くなよ!カバンの中に入部届け入ってるんだろ!?」
「お願い…返して。航平が待ってる」
「は…?あいつが待ってる?…ふざけんな。」
「舜…?」
舜は怒った顔をこっち向けた。
その名前を出すなと言わんばかりに。
なんでそんなに嫌いなの…?
航平はいい人なのに。
舜と違ってあたしを傷つけないでとなりで見守ってくれてるのに。
「舜…お願い、返して?」
「そんなにあいつがいい?好きなのか?なんで一緒にいたがるんだよ…」
「航平だから。」
「お前の隣はっ…俺の…」
「違うよ、舜。あたし達の隣はあたしたちのじゃない」
「ゆ、め…?」
「あたしの隣も舜の隣も…あたしのじゃないし舜のじゃない」
「なんで…?俺の隣はゆめの場所だろ?」
そんな事、言わないでほしい。
これ以上あたしを傷つけないで。
不安げな顔して見ないで。
悲痛な声であたしの名前を呼ばないで。
勘違いしたくないの、もう。
傷つきたくないの、もう。
恋は傷つくのがつきものなんて言うけど、あたしはもう十分よ。
十分、傷ついたの。
「あたしの隣は舜のじゃない」
あたしはそう言って舜からカバンをとって来た道を帰る。
航平が、きっと怒ってる。
何してたんだよって。
ーーー舜、ごめん。
でももう、あなたにこれ以上傷つけられたくないの。
もう、あなたを好きになりたくない…

