「ゆめっ」
「あれ?舜?どうしたの?」
「どうしたのじゃねぇよ、なんで職員室なんかに呼ばれてんだよ」
舜の言葉が荒くなる時は、不機嫌か悲しいかのどちらか。
わかりやすいんだよね〜舜は。
「うるさくしちゃったから怒られに行ったの」
「そんなんじゃなかっただろ…」
「そうだね、真面目だったね」
「あいつのせいだろ?」
「航平?違うよ。あたしだって楽しんでたんだもん」
「え…?」
「楽しかった、授業中はしゃいで怒られるの。新しい体験で」
「でもゆめ、それは…」
「よくないってわかってるけど、あたしは楽しかった。だから、航平を責めるのはやめて?」
「っ…なんでかばうんだよ…」
あたしの肩を掴む舜の手に力がこもる。
ーーー舜はどうしたのだろう。
どうして期待させる行動ばかりするの。
あたしをどれだけ傷つけてるか知りもしないで。
少しの苛立ち、そして深い悲しみ。
あたしは舜に初めてこんな入り混じった感情を持った。
「舜くーん!」
「あ、比野!」
「っ…!!」
一気にパァっと花が開いたように笑顔になる舜。
そんなに好きなら変な行動取らないでよ。
舜のばか。……大好きなんじゃない、まりかのこと。
あたしが入れる隙間なんてこれっぽっちもないじゃない。
現実を見せつけないでよ、神様。
「ゆーちゃん、ごめんね?航平が…」
「べつに、平気だよ!楽しかったから」
「でも航平が…」
「航平航平うるせーよ、まりか。」
「なによ!航平のせいでゆーちゃんが呼ばれたんじゃない!」
「つーか、航平って呼ぶな。」
「へっ……?」
「俺も比野って呼ぶから。航平なんて気安く呼ぶんじゃねえ」
「航平!ちょ…じゃあね!2人とも!」
航平に手を引っ張られて2人から遠ざかる。
離れてく距離。
ただ見つめるだけの舜。
呆然としてるまりか。
ーーーー離れても離れても離れたりない。
あたしはもっと、舜から離れなくちゃいけない。
「ごめん、ゆめ」
「いいよ、あたしも離れたかった」
「ゆめ……」
「あたし本当はもっともっと舜と離れなくちゃいけない。」
「……あぁ」
「離れなくちゃあたしこのまま舜を好きでい続ける。…それだけは嫌なんだ」
「お前のすぐそばには俺がいる。」
一生懸命慰めてくれる。
なんで、航平はこんなにまっすぐなんだようーーーー……。

