「ゆめ、今日は一緒に教室まで行こう」
「うん、行こう。」
バラバラに行くはずだった朝。
なんで一緒にいるんだろう。
でもここがあたしの居場所なんだ。
そう思うとほっこりした気持ちになるのに、なんだか胸がキューっと痛くなる。
今日の舜はとても変。
なにかに怯えているようで、不安になってる。
きっと、こんな風にすぐわかるのは幼なじみ歴が長いから。
こうゆう時は幼なじみでよかったって思えちゃう。
「ゆめ」
「あ、航平」
「っ…!?」
一気に舜の顔が怖くなる。
まるで睨むような目つきで航平を見る。
なんでそんなに嫌いなのだろう、航平はいい人なのに。
「またそいつと仲良く登校かよ」
「そいつじゃないって、舜って名前があるの」
「はいはい。でもなんで一緒なんだよ?きのーー…」
「ちょちょ!ストップ!ごめん、舜!航平と話しあるから先行く!」
「ゆめっ!?」
“ゆめ”って呼んだ声があまりにも悲痛に聞こえた。
まるで、“行かないで”って言っているような。
でもこれはまた自惚れで。
こんな風に思うからいつも自分で自分を傷つけてしまうんだ。
ーーー舜は、いつもと変わらない。
そう言い聞かせるしかなかった。
「なんだよ、ゆめ!」
「なんだよもこんだよもないの!あの話はしないで!」
「なんでだよ?おまえだって…」
「言ったの。言ったよ…でも、断られたの。」
「は……?」
「だから、一緒に来たんじゃない。」
今でも鮮明に思い出せる、朝のこと。
いつもみたいに出ようと思った。
でも少し出るのが怖くて、ちょっとだけドアを開けてみた、本当にいるのかなって。
少し開けたドアから見えたのは、とっても不安そうな舜の顔。
あたしと一緒だとそう思ったら一気に不安が飛んで行って、いつものあたしに戻ったんだ。
あたしがいつものようにすると、舜は一気に安心した顔になってホッとした。
あたしがあんな顔させるなんて、心苦しいから。
「ゆめは結局叶わない恋に走るんだ?」
「そうゆうわけじゃないよ?あたしは、舜の恋を応援するよ」
「そんなの今のうちだけ。」
「航平意地悪〜。やなやつ〜」
「うるせーよ」
そんなこと言いながらもわかってる。
心配してくれてるから言ってること。
あたしが傷つくって言ってるんだよね。
でも、傷つく覚悟は出来てるよ。
「ゆーちゃん!!」
「わっ、まりか!おはよう〜」
「ゆーちゃん可愛い!おはよう!さっき舜くんみたけど暗かったよ?」
「舜が?さっきまでは元気だったんだけどな〜」
「さっきまで?」
「うん。一緒に朝来てるときね?」
「っへぇ〜そうなんだ!あたし同じクラスだから聞いてみるね!」
「あっ、うん。」
なんとなく、“同じクラス”ってところを強調された気がした。
そう、あたしは同じクラスじゃない。
だから、どんな些細な変化もすぐに気付けない。
ーーーーあぁ、遠い。

