呼んでも届かなかった。
さっきだって掴もうとしたのに掴めなかった。
なんでこうもすれ違ってるんだ…。
“帰る”なんて、ちょっとした試しだった。
ゆめが、引き止めてくるんじゃないかって。
あいつとのラインを放り投げてでも引き止めてくれるんじゃないかって。
ーーーーでも違った。
どうしようないくらいばかな俺は、ゆめを試すだけ試して傷つけた。
「なにしてんだよっ…!」
「ちょっと、帰ってきて早々機嫌悪いのやめてくれない?」
「姉ちゃん…」
「ゆめと喧嘩でもしたの?珍しいこともあるもんね」
「…ちげーよ。ゆめは…」
「いい加減気付けば楽になるのにねえ?アンタもゆめもばかよ」
ため息をついた姉ちゃん。
気づく?……なにに?
俺もゆめもばかってなんだよ…
姉ちゃんの言ってることが全然理解できなかった。
ーーーーーピコンッ
「今ライン返す気分じゃないっつーの」
「見ないと後悔することもあるんじゃない?」
「…わかったよ、みるよ。」
そう言って携帯を手にしてラインを開く。
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舜、ごめんね。
明日からバラバラで行きたい。
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ゆめからの今まで1番嫌なラインだった。
なにが見なかったら後悔するだよ。
こんなん見なかった方がよかったよ。
なにも知らずに“おはよ、ゆめ”っていつものように明日もできてた。
もう開いてしまったからにはそうはいかない。
もう、そんなに俺といたくない?
………航平が、いいのか?

