「航平ってなに。」
「なにって…名前だよ?黒田航平って言うんだよ?」
「…しってるよ。」
「舜?」
「なんだよ、航平と仲良くできた途端舜かよ。」
「えっ?」
「さっきまで…舜ちゃん舜ちゃんって言ってたくせに。」
「っ…それ、は…」
「航平ってやつと仲良くなったら俺はもういいわけ?」
舜ちゃんが…とっても切なげに悲しそうな目で見てくる。
怒っているのに、悲しげな瞳。
ーーーー自惚れてしまう。
舜ちゃんは今、ヤキモチを妬いてくれているんじゃないかって。
違うのに、それは絶対にありえないのに。
でも舜ちゃんーーー…そう思わせてしまうんだよその瞳は。
「航平は…、友達だよ…」
「ゆめって、確かに誰とでも仲良くなれるよなすぐ。でも、あいつだけはやめて」
「どうして?」
「ゆめとあいつが一緒にいるの、やなんだよ」
「舜ちゃん…ヤキモチ、妬いてるの…?」
「へっ…」
ぶつけてはいけない質問。
あたしだけが傷つく質問。
なのに、聞いちゃった。
だけどあたしは少しだけ…ほんの、少しだけ期待したんだ。
“妬いたよ”っていうこの一言を言ってくれるんじゃないかって。
どんな理由であってもいい。
ただ、ヤキモチを妬いてくれたのならあたしはそれだけで嬉しい。
「ヤキモチ…か」
「舜ーーー……?」
「ちがうよ。ゆめが、ただ悪い奴に引っかかりそうで心配なだけ。」
「っ、だよね!ごめん、なんか変なこと聞いちゃっ、てさ…!」
「ゆめ?」
わかりきっていたことなのに。
いざ聞くとこんなに痛いなんて。
胸が痛くてたまらない。
瞳に涙が溜まる。
視界が滲んでよく見えない。
ーーーピコンッ…
この雰囲気にはふさわしくない、音。
まるでこんな雰囲気を消してくれるように、航平からラインが来た。
「こ…へい…」
「っ!?ゆめ、連絡先…交換したの?」
「うん、ごめん舜ちゃん、携帯見るね」
「ちょっ…」
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ゆめ、大丈夫か。
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こんな短いのになんでこんなに優しさを感じるんだろう。
本当に、不器用な優しさ。
航平がくれるまっすぐな不器用な優しさはあたしを救う。
「ゆ…め…?」
「あはっ…もう、敵わないなぁ…」
「っ…帰る。」
「うん、ごめんねありがとう。おやすみ」
ーーーーーーバタンッ
「っゆ、め…っ」
舜が呼んでいたなんて、あたしは知らない。

