「ゆめが、泣いてるかと思ったんだ」
「泣いてなんかないよ?もう〜誰かそんなこと言ってたの〜?」
舜ちゃんがあの時あの角度からあたしの顔が見えるはずがない。
でも嬉しかった。
舜ちゃんがそれだけのためにあたしを待っててくれたことが。
こんな時だけあたしは饒舌で。
簡単に嘘をつける、ペラペラ出てくる。
舜ちゃんとこのままで幼なじみ“ゆめ”でいなくちゃいけないから。
舜ちゃんはこれを望んでいるから。
だからあたしは決して言っちゃいけない。
バレちゃいけないんだ、この思いを。
舜ちゃんが好きで好きで大好きで仕方ないことを。
「舜ちゃん、宿題手伝ってよ」
「おう!」
あたしはね、舜ちゃんがこうやって側で笑ってくれてるだけで幸せだよ。
いつか、違う人が隣に側にいることになるけれど。
それでもあたしはたまに舜ちゃんが来てくれたら幸せになれる気がするんだ。
「ゆめ、あの、さ…」
「んー?」
「あいつ…大丈夫か?」
「あいつ…?」
「黒田…航平…」
「航平?大丈夫だよ、優しいから」
あたしがそう言うと何か面白くなかったんだろう。
ムッとした顔をする舜ちゃん。
そんな舜ちゃんも可愛くて大好きだなぁって思うのはきっと重症。

