「なんで、逃げてるんだろう」
1人、帰路を歩く。
なんで逃げたの?逃げる必要なんてない。
明確に言われたわけじゃないのに。
でもね、きっとこれは当たってるの。
嫌でも幼なじみだからね?
嫌でも舜ちゃんが大好きだからね…
わかるんだよ…まりかに恋をしたことくらい。
「おい。」
「っ?!え!?」
「おばけじゃねぇーよ俺。」
「なんで。いるの?」
「お前にアイス奢らせようかと思って」
「へ…?」
「踏んだだろ。だからアイス。」
「ふっ…あはっあははっ…」
「なっ!?笑うとこねぇーだろ!!」
これはきっと、黒田航平なりの優しさなんだ。
きっと、あたしは見られた。
泣いてるところを。
ーーーー黒田航平は優しいなぁ。
「なんだよ、なんか顔についてるか?」
「ううん。黒田くん、ありがとう」
「別にお前が礼いうことしてない。」
「黒田くんって、素直じゃないんだね?」
「だーかーらー!笑うなよ!」
おかしいね?さっきまであんなにいがみ合ってたのに。
君はきっとあたしの心を今救ってくれた。
不器用な慣れない優しさ。
舜ちゃんとはちがう、優しさ。
あたしは明日も笑えるよ。ちゃんと。
「くろ…」
「航平でいい。」
「じゃあ、あたしもゆめでいい」
「おまえは…」
「あたし、“おまえ”って名前じゃないよ?航平」
「っ…ここで呼ぶのは…違うだろ…」
「ん?」
頭をくしゃっとする航平。
暗めの茶髪で航平の性格からは想像出来ないくらいふわふわの髪。
航平も、モテる部類だなぁ。
背は高いし容姿端麗で頭もいい。
これはずるいなぁ。
風が吹けば見える、左耳にあるピアス。
シンプルだけどキラッと輝くピアスは航平にぴったり。
「ゆめ、見過ぎ」
「なっ…まえ…」
「ずるいなぁ、ゆめは。」
「なにもしてないよ?」
「気付かないのも罪」
そんなこと言いながらアイスを食べて家に帰った。
航平はアイスを奢ってくれて家まで送ってくれた。
出来た男だ…っと心底思った。

