見慣れない土地に降りたった。
かつて住んでいた町らしいが初めて見る景色だった。
 
 
 
何時間か前、目の前にはシンがいる。
 
「本当にいらない?」
今にも泣きそうな顔で自分の写真を持っている。
 
『だからぁ~写真なら持ったって言ったじゃん!』
空港に来るまでの車から繰り返してるこの会話にもう嫌気がさしていた。
 
「皆で写ってるのだろ?俺だけの持っててよ!!」
もう言ってる意味が分からない。
 
面倒になった私はシンの言葉を無視して見送りに来てくれた人たちの群の中にいた。
 
時間になり荷物を通そうとした時シンが来た。
 
「辛くなったら帰って来い。待ってるから」
いつものおちゃらけた顔とは違い真剣な顔で私の頭に手を置きながら言った。
 
『写真…』
そう言って右手を差し出す。
シンは何も言わずに写真を手の上に置いた。
目を見つめ笑って歩き出した。