「……ほんと、キモかった」



「百合さん、また泣くかと思った。
さすが場数を踏んでるだけあるね。



ボスの女って呼ばれてんの。
わかる気がするな」



「はぁ?!

えっとそれって、誰が、誰の女?

何それ、勝手に『姐さん』みたいに呼ばれたくないんだけど!」





「勝手じゃ無ければ、いい?公表していいか?」



「………………」



あ、荒川さん、また私を抱きしめてる。

なんか変な癖ついた?



もう、荒川さんは気付いてる。
バックヤードで抱き締められたときに、聴こえた。



《百合……俺のこと好きなら、このままじっとしてて。

今さらだけどずっと何年も想ってたんだ。

死ぬまで一緒にいてくれよ……》



「なぁ、俺には言葉で伝えてくれよ」






「私、10歳も年上だよ?」

「あぁ」

「バツイチ」

「うん」

「精神年齢、超低い」

「知ってる」



もう……でも、やっぱり昔の事が気になって、確かめたくなる。



「荒川さんは、私に心を見透かされて生きるの、嫌にならない?」

「心の奥まで全部さらしてやるよ。
いつでも好きな時に好きなだけ見透かしてくれ」



……あぁ、やっぱり…彼はそういう人だ。



「好き」



「はぁ……やっと言った。

百合、俺は愛してる………」



《名前、呼んで?》



「うぅ……。
り…りゅう、じ」



《ま、いっか。
ベッドで連呼してもらおう》



「え~?!何そ……」

続きは言わせてもらえなかった。



優しくて暖かい唇が重なってきたから……。






《完》