「うん…うん、そうだね。

あのね………。

説明が難しいから、簡単に言うとね、
いつもじゃないんだけど、
潜在意識まで視えちゃうことある。



意識してない気持ちなのに、なんでかなぁ。

不思議でしょ?」



「へー!

それは俺には想像を絶する世界だな。



はじめて視えた時、怖くなかったか?

百合さん、突発的なことに弱いだろ?」



「ははは……よくご存知で。

踏み込んじゃイケナイ所に入り込んだ感じがして
全身、総毛立ちました。

自分もどこかに飛ばされてしまいそうで、
引きずり込まれてしまいそうで、
すごく怖かった」



「だな。人の領域じゃないよな。



あー、アレだ。

おふくろさんが言ってたやつ。

きっとそれも『神様からのプレゼント』なんだよ。



百合さん、期待されてるんだな。

使いこなせる力だから、与えられたんだよな。



大丈夫だ。

俺が、そばにずっと付いてるから。



百合さん、俺が抱き締めてると安心するだろ?

嬉しいんだよな……俺が知ってる中で一番、穏やかな顔になるから。



辛いとか怖い感覚が襲ってきたら、俺の体も触って?

そうすれば、
辛いのも怖いのも、中和してやる自信ある。



怖がらないで思う存分使えばいい」



うわぁ
なんて人だ!この人。



じわじわと、何か熱いものが込み上げてきた。



「……ありがとう。
そんなこと言われたら……う、嬉しすぎるっ…」



急に、目に溢れてきたものの感覚に驚いているうちに、
ぽろぽろと、涙が頬を伝って流れ出した。

人前で、こんなに分かりやすく涙を流すのは、
久しぶりだった。



「……えっ?なんだよ、なんで泣いてんだよ。

俺が泣かしたのか?

や、俺、苦手なんだよ泣かれるの。

まいったな……、
おい……嬉しいなら早く泣き止んで笑ってくれよ」



スーツが湿ってしまうのも気にせず、
私が泣き止むまで、ずっとそのまま抱き締めてくれていた。