さきほどの「熱い」抱擁は、お店のバックヤード、人の居ない場所だったので
幸い誰にも見られていなかった。



しばらく私を離してくれなかった荒川さんは、スマホの呼び出し音とともにすんなり自由にしてくれた。



忙しい中、担当外なのにお世話になってしまった。

電話が終わったところで声をかける。



「他にお仕事があったんでしょう?
ごめんね。
私にとって、警察と言えば荒川さん!なんだもの。
いつもありがとう。

じゃ、お仕事に戻るんでしょ?
気を付けてー」



お願い…早く出て行って!



「いや、ボランティアだよ百合さん。

これから一緒に『署までご同行願います』だ。

よろしく~」



ちょっと待ったぁ!
なぜに腕を組まれているのでしょうか?



いったい何の罰ゲーム?

これじゃ同行じゃなくて連行では……。



今日はとことん、この人と一緒にいなさいってこと?



荒川さんはバックヤードから戻ったあと、まるで私にわざと心の中を視せる様な行動を、取り続けていた。