16歳の春。

田舎から都会へ引っ越してきた俺は不安な気持ちを抑えながら入学式に向かっていた。


友達はできるのか。3年間1人だったら。
こんなマイナスな事を考えたりしていると、

流行りについていけるのか。みんな彼女がいるんじゃないか。
と、そんなくだらない事も不安になってくる。

まぁ俺は恋なんか出来ないだろうな。

俺は不安を和らげるようにすっと息を吸った。

「桜だ。」

桜に見とれていると誰かと背中がぶつかった。
後ろを振り向くと謝るより先に口から出たのは

「綺麗…」

やべっ…!!!

俺は出てきた言葉に驚いて手で口を覆ったが遅かった。

「へ、へ…!?」
その子は背の小さい女子で
俺の言葉にものすごく戸惑っていた。

恥ずかしすぎる…

でも綺麗な黒髪のロング。
吸い込まれそうな真っ黒な瞳。
本当にきれ…ってそんなこと考えてる場合じゃない!!

「すみません!大丈夫ですか?」

俺はとっさに謝った。

「へっ!??あ…!!大丈夫です!!こちらこそごめんなさい!」

彼女が立ち直ったのを見てみるとどうやら同じ高校らしい。
名前は何て言うんだろう。
聞こうとした時

「夜留〜何やってるの?おいてっちゃうよ〜?」

彼女の友達か
まってと言いながら走っていく彼女を見つめながら

「よる…。」

俺はそう呟いた。

「綺麗な人。」