大好きな3人へ

次々に着席していく生徒。

口をとんがらせぶつぶつと文句を言いながらも真美も自分の席へと戻っていく。

相変わらずの真美に苦笑いしながら京も席へと戻る。


ナイスタイミングだわ、チャイム。助かった～。ああなった真美はしつこいからなぁ。

チャイムが鳴り終えたところで先生が教室に入ってきた。

若い、女の、巷では綺麗と言われている俺らの担任の先生。

今日はいつもより少し派手なワンピースで先生の言うよりかむしろ都会を歩くOLのような服装だ。

だが俺にとってそんなことどうでもよかった。

先生と一緒に入ってきたあの子と比べると。

静かに俯きながら先生の後ろを歩く少女。


紛れもなく昨日のあの子だった。


「みなさん、おはようございます。今日はなんと、このクラスに新しく仲間が増えることになりました。自己紹介してもらいますね」

騒ぐ生徒。ざわつく教室。

だが彼女は一人、静かであった。

「……白花 雪 (しろはな ゆき)」

蚊の鳴くような声。もしかすると聞き取れなかった人もいたかもしれない。ざわついていた教室が静まり返った。

しろはな ゆき。

俺は確かに彼女の声を耳に焼き付けた。そして無意識にその名前を繰り返していた。

名は体を表す。まさにその通りだ。

花のように可憐で雪のようにキラキラしてみえる。

彼女の素っ気ない自己紹介をなんとか盛り上げようとする先生なんて俺の眼中には入らず、ただひたすら彼女の姿に魅入っていた。

肩まで伸ばした艶やかな黒髪、陶器のような透明感のある肌、血色の良い唇。そして前髪の奥からチラリと覗く大きな瞳。

こんな言い方は大げさなのかもしれない。だが俺はこんな表現をしてしまうほど彼女の虜になっていたのだ。