「……雪ちゃん、いっつもなんでもいいしか言わないね。本当は私たちと一緒に遊びたくないんじゃないの?嫌々来てるんじゃないの?」
真美ちゃんは低い声でそういった。
「おい真美。そんな言い方ねーだろ」
「本当のこと言っただけじゃん」
「雪、まだ慣れてないだけだよ。そんな言い方したら余計仲良くなれないだろ?」
「慣れてないって、もう半年だよ?半年も経ったのに全然変わらないじゃん、雪ちゃん」
そう、その通り、私は変わってない。変われないんだ。
3人のやりとりは風のように耳をすり抜けていく。
「私…ジュース買ってくる」
たまらず私はその場から逃げ出した。
ポケットにはお小遣いでもらった五百円玉が入っていた。
公園を出たすぐの所に自動販売機がある。
五百円を入れ、炭酸のジュース2本とオレンジジュースとリンゴジュースを買った。
ジュースの缶はとても冷えていて、まるで私の心の中みたい。
このままじゃだめだって思ってるのに、私の心はあの頃から凍ったまま。
彼らの優しさにも溶けることができない。
私は深くため息をついてジュースを持って公園へ戻る。
彼らは遊具の陰になっているベンチに座っていて、私は遊具の裏から回ることにした。
「………だから、2人は騙されてるんだって!」
叫ぶ真美ちゃんの声が聞こえた。
思わず私は立ち止まった。
「あの子は、ただ私たちに構って欲しいだけだよ!というか、誰でもいいんだよ!誰かに構って欲しいだけなんだって!」
「真美、いい加減にしろよ、しつこい」
「京!あんたなんにもわかってない!結局男子って可愛い子が好きなだけだもんね!雪ちゃん、顔だけは本当に可愛いもんね!!」
「はぁ?真美、お前ふざけんなよ。それ本気で言ってんの?」
「ふざけてるのは京じゃない!あんな子のなにがいいわけ?意味わかんない!喋んないし、人の顔もみないし、笑わないし!!あんな子に構うわけがわかんない!!」
「…いくらお前でもそれ以上言ったらぶん殴るぞ」
「京!暴力はやめろ!…真美も、少しは落ち着け」
「ゆっくんもあの子の味方なんだね。ほんと、あの子が来てから何もかも最悪!3人でいても楽しくない!!
あんな子、いなくなっちゃえばいいのに!!」
持っていた缶は全て地面に落ちた。
表面についた水滴が土を絡め取り、缶は砂まみれになった。
けど私は拾おうとはしなかった。
落とした音に3人は一斉にこちらに視線を向けた。
