俺は彼女のことが知りたい。

なんであんなに悲しげなのか、

一体何を抱えているのか。

それが知りたい。

そしてその抱えているものを半分俺に分けて欲しい。

彼女を助けてあげたい。

「俺は…4人でいれたら楽しいだろうなって…思う」

「おっしゃ、決まりだな。じゃあ早速行くぞ」

俺の言葉を聞くや否や京は俺と真美の腕を掴んで彼女の元へと駆け出した。

「はじめまして、俺は美咲(みさき)京。こっちはまぁゆーとで、こいつは野村(のむら)真美。よろしくな」

彼女の目線は一瞬俺たちを見てすぐ手元へと下がった。

「…白花雪…。よろしく…」

ガラスのような彼女の声はとても美しい。

「早速だけど、雪って呼んでいい?あ、俺らのことも名前で呼んでくれよな。京、ゆーと、真美だからな!」

「……わかった」

マシンガントークの京は止まらない。

ニンマリと笑う京に彼女は困っているように見えた。いや、確実に困っている。

「ちょ、京……白、花さん困ってるから…それくらいにしろって…」

彼女の前ではなかなか上手く話せない。

自分の口が自分の物でないように動かなくなるのだ。

「……でいい」

微かに彼女の言葉が聞こえた。

「……え?」

「………雪でいい。結人君」

彼女…雪の声は少し大きく聞こえた。

初めてまともに話せた気がする。いや、俺は聞き返してしかしてないが…

そしてまた俺はタコのように顔が赤いのだろう。

「おお、なんか仲良くなったみたいだな!ゆーと!ほら、真美も挨拶しとけよな」

「え、っと…真美です。よろしくね、雪ちゃん。この2人、変な奴だけどいい奴だから。よかったら付き合ってあげてね」

彼女…雪は黙って頷いた。

なんだかんだ言っていた真美も雪といい関係を築けそうだ。


「おっしゃ、じゃあ今日の放課後一緒に帰ろうぜ。雪、いいか?」

「別に…いいけど」

雪の声は別段嬉しいというわけではないみたいだが、かといって嫌というわけでもなさそうだ。

休憩時間の終わりを知らせるチャイムが鳴り俺たちは各々席へともどる。

雪の視線は相変わらず下を向いたままだった。