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「…これ、昨日落とした。柊結人君」
彼女は先生に言われた廊下側の空いている後ろの席ではなく、スタスタと俺の前へ来て真っ白い袋を差し出してきた。
それは俺が昨日落とした給食袋。
ああ、俺、そのままにしてたのか…。
って…そういうことじゃなくて…
彼女が、今、俺の真ん前にいる。
視線は手元の給食袋へと向いているので目は合わない。
彼女が今俺の顔を見てなくて本当によかったと思う。
俺の顔は今まさに茹でたタコのように真っ赤だろうから。
「…え、あっ、あり、ありがと…う」
突然のことでもあり、そして周りの突き刺さる目線により俺はしどろもどろになり、上手いこと言葉が出なかった。
彼女は何も言わず、本来の自分の席へと戻っていった。
クラスメートはざわざわと落ち着きを知らない。
そして俺の心臓もそのまま飛び出てしまうんではないかと思うほどに暴れていた。
