私は幼い頃から愛されて育った。


優しいお母さんと、お父さん。

兄妹はいなかった。けど寂しくなんてなかった。

決して裕福な家ではなかったけど、大好きなお父さんとお母さんに囲まれてとっても幸せだったの。

けど、幸せなんて一瞬で消えてしまう。

「雪、雪はお父さんやお母さんに似てとっても優しい子だ。だから、何があっても常に自分にも友達にも優しくするんだよ」

これがお父さんの最後の言葉。

「雪は、お母さんとお父さんにたくさん幸せをくれたね。本当に、本当にありがとう。雪は周りの人を幸せにすることができるよ。だから、これからも精一杯幸せに満ちて生きてね」

これは、お母さんの最後の言葉。

いつもいつも口うるさく友達には優しくしなさいって言っていたお父さんは、高校からの友人だったという人に騙され莫大な借金を抱えた。

6000万円。

小3の私にはそれがどれほどの大金なんだかわからないけど、それはあのお父さんから笑顔を奪うほどの大きなものなんだと理解した。