そして今にも消えそうな、悲しげな声で言った。

「今はまだダメ。また今度」

久しぶりに触れた雪の手はとても冷たく細かった。


細いのは手だけじゃなくて、全体的に痩せ細っていたことに今頃気づいた。

「…雪、痩せたね」

「…ダイエット中なの。つい、食べ過ぎちゃうから」

掴んでいた手を放して雪は言った。


「じゃあ、あたし帰るね。久々に結人に会えて嬉しかったよ。明日、11:00にあの遊園地…って言ったらわかるかな?待ってるね」

雪はそういって席を立ち、ベージュのロングコートを手にとって店を後にした。

俺は雪を追いかけることも、呼び止めることもせずただ座っていた。

テーブルには全く減ってないキャラメルマキアートと1枚の千円札が残っていた。

あの遊園地…か。

俺は注文したコーヒーに初めて口をつけた。

「…苦いな」

ぼそりと呟いた俺の言葉に返す者はいなかった。