平日の午前中の百貨店の化粧品売り場は比較的暇で、在庫管理をしたり、ダイレクトメールを書いたり、いろいろな雑務をこなしている。


シフトは、開店から出勤の早番。
昼前から閉店まで出勤の遅番、
という風に分かれていて、私は今日は早番の日。
18時に仕事が終わる。


「もーねー、本当にいろいろ最悪だったの。ねーすず、今日仕事の後呑みに行こ。最悪な男の話、してあげるから……」


手元を見ながら話していると、手元が急に陰ったので、お客様かと思い、ばっと顔をあげ即座に笑顔で声かけをする。


「いらっしゃいませ!」






「……誰が最悪だって?」





げっ。
げっ。
げー!!!



「須賀っ!なんであんたここにいるのよ!?」


私は突然現れた須賀に驚いて後ろの棚にしがみつく。



「なんでって。連絡しても無視されるからわざわざ誘いにきたんだけど。」



須賀は、そう言いながらカウンター越しに私の腕を掴む。


「………照れんなよ。」



「照れてないわっ!!店にまでくるなんてどういうつもり………でしょうか?」



私の視線の先には百貨店のフロアマネージャー。
店先で騒いでいると後で怒られてしまう。
とっさに敬語に変えたけど、騒いでたのを気づかれたのか、血相を変えてこちらにやってきた。



「須賀様っ!!今日はいかがなさいましたかっ!?お一人ですか?すぐに、担当者をお呼びいたしますので………」


フロアマネージャーがペコペコと、須賀に頭を下げる。



「こんにちは。今日は買い物をしに来たのではないので、呼ばなくて大丈夫ですよ。」


須賀が、マネージャーの方を見て答える。


「……?では今日はどういった……」


須賀はフッと笑い、私の方を見るととんでもないことを宣言した。




「今日は、私の婚約者に会いに来たんです。」