「なに。何かよう?」


視線を合わせようともしない須賀に、私の胸はギュウッと締め付けられ、うまく息が吸えないほどだ。

ぐっと、拳を握り私は須賀の前まで歩いていく。
須賀の目の前に立つと、須賀は苦々しく笑うとネクタイの結び目を緩める。


「婚約は、お望み通り解消したけど?」


須賀は窓の外を眺めながら言う。


早く。
早く、伝えなければ。何か言わないと。

そう思うのに、言葉が胸に引っ掛かって、須賀を見つめる事しかできない。

須賀は、ふぅーと息をはいて、近くのソファーに座ると眼鏡を外した。


「……もういいよ。恭華の好きなようにしたら?」


「私の好きなように………」


私は須賀の言葉を呟く。


私は自分でも何を思ってそうしたのかわからない。からだが勝手に動いた。そんな感じだった。


私はソファーに座る須賀の前にいくと、ネクタイをぐいっとひっぱり、須賀にキスをした。