恋する気持ち。

***

「………なるほど。それで先輩はそのひっどい顔なんですね。」

閉店時間に近づき、もう売り場にはお客様もマバラで、すずに昨日の事を報告中。


ちなみに、今朝。実家から電話があった。須賀から正式に婚約を解消したいと申し出があったと。
お父さんは怒っていて、お母さんはすごく落ち込んでいた。
っていうか、私がいちばんツラいって。


「……それで?」


「ん?それで?……それで終わりだよ。」


私はまたにじんできた涙を拭う。

「………先輩。失礼ですけど。」


そう前置きして、すずは思いっきり息を吸い込む。


「ありえないですっ!まだ何も伝えてないのに諦めようとしてる先輩が。終わり?まだ何も始まってないっつーの!」


すずのあまりの勢いに思わずキョトンとしてしまう。


「好きなら、これで終わらすなぁー!先輩!たまには自分から追いかけてください!いつも逃げ出すの、もう終わりにしましょう!」


バンっと勢いよくカウンターに手をつくすず。


「……締め作業、私やっておきますから。須賀さんに会ってきたらどうですか?失いたくないなら、自分から動くべきです。」


すずの言葉に胸がギュッとなる。私は確かに今までずっと逃げて、追わなかった。これ以上傷つくのが嫌だったから。だからいつも、失ってきた。


出会ってからの須賀のいろいろな表情を思い出す。


私、須賀を失いたくない!!


「ごめん!すずっ!!私、行ってくる!」




閉店時間になったと同時にタイムカードを押し、急いでロッカーへと向かう。


須賀に会いたい。伝えたい。