恋する気持ち。

そうこうしている間に、車は大きな一軒家に停まる。

「ここ。俺の知り合いの人がやってる店なんだ。」


ヨーロッパの一軒家のようなキレイな店にはいると、中から可愛らしい女性がコックさんの格好をして現れる。


「伊織くん。来てくれたんだ。」


「よっ。紗奈、頑張ってるみたいだね。」


そう言って須賀はフワッと優しく微笑む。
紗奈、と呼ばれた女性も須賀の方を見て、フフっと笑う。


「あれ……そちらは?」

「あぁ。こちらは美波さん。高校の同級生。」


「はじめまして。」


私は紗奈さんに挨拶をする。
胸に引っかかるものを抱えて。


「伊織くんが、女の子を連れてくるなんて!珍しい!じゃあ今日は頑張っちゃうね!」


そう言って紗奈さんは厨房へと入っていった。


私は案内されたテーブルに座ってもさっきのことが引っかかってモヤモヤしている。


いつもなら、婚約者って言うのにな。
っていうか、伊織くん。って言ってたし。


そんな小さな事だけど、それは私の胸にトゲのようにささって、チクチクと痛む。


紗奈さんの事を見る須賀の表情にも私は嫉妬してしまう。


あぁ、これって。ヤキモチだよね。


美味しそうな料理が次から次へと出て来るけれど、私の気持ちは下がったまま。


始めは須賀も気を使って話しかけてくれたけど、デザートが来る頃には二人の間には会話がなくなってしまっていた。


このままじゃいけないことはわかってる。
でもどうしても、言葉が出てこない。言葉と一緒に涙も出て来てしまいそうだから。


絞り出した言葉は、
「美味しかったね。」
そう言って、無理に笑うけどそんな私を見て須賀は小さくため息をはく。