「………俺の前で、他の男を見つめるな。」



須賀が、眼鏡をとったとき。
切れ長の綺麗な瞳。
左目の涙黒子。

それが視界に入った瞬間。
『あぁ。ヤバイ。』って本能的に感じる。
ヤバイって思ってるのに、その瞳から目が離せなくて、逃げるタイミングを失ってしまう。


唇に、須賀の唇を感じるとそれは荒々しく重ねられて。
私の考える力を奪っていく。
うっとりと、須賀を感じる事しか出来なくて。
理性が働かないってこういうことを言うんだ……なんて、ぼんやりと思っていると。


「………そろそろ止めとく?恭華、力抜けてきたし。」


その言葉で、今まで遠くの方で見守っていた理性が、駈け足で帰ってくる。


ヤバイヤバイ!!
またキスしちゃった!!
しかも、まだ入口!!


「なっ!なにすんのよっ!!」

私はバシッと須賀の胸を叩く。
須賀は眼鏡をはめながら、ニッと笑って答える。

「ずいぶん気持ち良さそうだったけど。まぁ、乗って。」



ご機嫌が治ったのか、それはそれは軽い足取りで車に乗り込む須賀。

私は下を向き、そそくさと車に乗り込む。
まわりの視線がいたい。

何でもいい、誰でもいいっ!
とにかく早くここから連れ出してー!!