3月の日々


「あった、あった……」

藤井先生に鍵を渡され、机を開けると中には色々なものが入っていた。

「……⁇これは……⁇」

分厚いノートが3冊出てきた。

中を開けると、 "明智先生、退院おめでとうございます" と書かれていた。

ノートの中には、俺が今まで教科担当とか担任とかで関わってきた たくさんの生徒からのメッセージで埋め尽くされていた。

「……こんなん作ってくれるとか……」

何、俺を感動して泣かせるつもりだったの⁇

「ちゃんと、受験勉強しろよ……」

俺のこと心配してくれてるのは分かってても、俺はお前らのことが心配だよ。

でも、嬉しい。
こんなに嬉しいことは久しぶりで、涙を堪えるのに俺は必死だった。

涙腺緩いな、俺。

涙を見られないようにと、俺は上を向いて目を瞑り 目頭を押さえた。

「……泣きそうになるくらい感動してるんですか⁇」

藤井先生に声をかけられた。

「……優しい子が多いですよね、この学年。
いや、本当……俺のことを覚えてくれていただけでも嬉しいのに こんなメッセージとか……卑怯だと思いますね。」

未来と別れを告げたりして、色々 弱ってる今 こんな優しいメッセージとか読んだら……そりゃあな。

泣きそうにも……いや、泣くのも仕方ないよな。

今度は下を向いて、ハンカチでグッーと目元を押さえた。

嗚咽を漏らさないように、声が出ないように頑張って、気をつけて。

「明智先生が涙流して、感動していた と生徒たちには伝えておきますね。」

「……ええっ、言わないでくださいよ……大の大人が恥ずかしい……」

「感情に素直なのは、いいことだと思いますがね。」

他愛ない話を時々挟みながら 俺は今まで 放置したままだった仕事に取り掛かり始めた。

授業はないわけだし、暫く 溜まっていた仕事を消費していくことができるんだろう、と思う。