いつか、彼のお嫁さんになる。
それが私の夢だ。
でも、いつかって、一体いつだろう。
死ぬ前に、死ぬ前に、と気持ちが焦る。
「ゆっくり、進んでいこうね」
そう言ったのに。
気持ちだけが前のめり。
一緒に暮そうね。
おはようってキスをしたい。
いってらっしゃいと見送りたい。
おかえりなさいってお風呂を沸かして待っていたい。
たくさんの愛情が詰まった手料理を作りたい。
笑う時も、泣く時も、傍に。
焦ってもいいことなどないとわかってる。
でも、“いつか”を励みの希望にするには私の前に置かれた境遇は、難しかった。
「愛は、あとどれくらいいきられる?」
あの日の台詞が蘇る。
外吹くさすらいの風に尋ねた。
返事が返ってくるはずもないことは承知していたのに、聞かずにはいられなかった。
彼の幸せとはなに?
彼にしてあげられることはなに?
彼の心地のいい場所はどこ?
彼が歩きやすいスピードは?
彼の望みはなに?
彼が本当にほしいものはなに?
叶えたい叶えたい。
彼の幸せを。
心からの平安を。
やっぱり、私にはこれしかないんだ。
いくら、わがままを言ってみても、大切な人が笑うこと、そのために頑張ること。
その生き方しか私にはできない。
不器用で弱いから、彼のこれからを思って1人淋しく姿を消すようなことはできない。
ううん、私が思っていたより大人ではないと知って、彼のくれるたくさんの愛情に触れてしまったから、もう、今までのことをなかったことにして消えるようなことはできない。
そして、そんなことは彼の望むことではないと、信じたいから。
信じているから。
私はきっと、花嫁さんになります。
大好きな大好きな彼の、花嫁さんになります。
でもね、今はこのままでいい。
このままがいい。
毎日、幸せ。
だから、私が明日死んでも後悔なんかしないでください。