別にほしくもない耳かきを買ってもらい、2人で肩を並べて家の近くまで戻ってきていた。


「明日はとうとうテスト返却かぁ……」


明彦は顔をしかめてそう言った。


「そうだねぇ。全科目で何点取れているか、不安だよね」


本当は不安などなかったけれど、明彦に合わせてそう言った。


「知世は頭がいいから大丈夫だろ？　俺はダメだぁ～……」


明彦の成績は中の上くらいで決して悪いわけじゃない。


一週間前からしっかり勉強していればもっと上を目指せていただろう。


だけど明彦にはちゃんと勉強するという気持ちがないのだ。


負けたくないけれど、そこそこの場所にいられればいい。


そんな考えに甘えている事を、あたしは見抜いていた。


「あれ？」


あたしの家の近くまで来たとき、明彦が立ち止まった。


「なに？」


そう聞きながら、明彦の視線を追っていくとそこにこの美と京一郎の2人がいる事に気が付いた。


2人もこちらに気が付いて、黒い帽子を被っている京一郎が手を振ってきた。