昨日までその声がどんなにうれしかったことか。

今となってはその気持ちは消え去っている。

「伊川くん…」

「おぉ、紫原おはよ」

遙を見たゆうなが不安そうにあたしに振り向いた。そりゃそうだよね。だって…。

「実はさ、俺ら付き合うことになったんだ。」

遙の隣にはあたしじゃない女の子がいるんだから ────。







「あのさ…」

遙の顔が赤く染まる。それは夕日のせいなのかわからないけど。なんだか日常が変わる気がした。

「俺…さ…」

「うん」

謎の緊張感が走る。遙の顔はさらに赤く染まった。

「好きな人がいるんだ」

「え」

「同じクラスでさ、かわいくて。母子家庭らしくて、毎日アルバイトで家計を助けてる子なんだ」

「そう…なんだ」

「それでさ」

「なんであたしに相談するの?」

また強がってしまう。

本当にかわいくないな、あたし。