─放課後─

「皐月!またねー」

「またねー」

「皐月、ばいばい!」

帰宅、部活、デート、遊び…。みんなそれぞれ用事があって教室から去っていく。

そんなみんなを見送る、用事のない暇人。そう、あたし。

学校に残って勉強するわけでもなく、部活するわけでもなく。

窓から校門から出て行く生徒を眺めている。

みんな夕日に照らされてオレンジ色に染まっている。

きれい。…そう思っていた時だった。

「おい、皐月」

「遙?」

背後からの声は遙からだった。

別に一緒に帰る約束していたわけじゃない。まずもって、遙は部活がある。

「なに?珍しいじゃん、うちの教室に来るって」

なになに?と下から顔を覗く。

「相談があってさ」

「相談?いいけど…遙が悩むなんて珍しいじゃん」

小さい頃から遙が悩むことなんてなかった。本当になかったのか、相談されたけど記憶に残らないくらいしょうもない悩みだったのか…。そんなの今更わかんないけど。

「なに?」

「あのさ…」

遙の顔が赤く染まる。それは夕日のせいなのかわからないけど。なんだか日常が変わる気がした。