ーーーーー4月7日ーーーーー
華咲高校入学式...。体育館では...。
「以上で華咲高校入学式を終わりにします」
「新入生退場」
次々と新入生たちは退場していく。
「新入生はそのまま自分の教室に戻れよ」
と、先生が生徒達を促す。
「かったりィな...」
と、言いながら聡(さとし)は皆とは違う方向へ。
「あれ?聡どこ行くんだよ?」
「裏庭。終わったら教えて」
と、言い聡は裏庭へ向かった。
「ったく...しょーがねーな」
裏庭に着いた聡はゴロンと寝転がっていた。聡はそのまま眠りに着いた。数時間後...。
「ん゛...」
聡は目を覚まし体を起こした。そこへ...。
「あーー!!!いたーーー!!」
「見つけた!!!」
と数人の女の子達がやってきた。
「もー!吉川(よしかわ)君探したよ!!」
聡はチラッと女の子達を見た。
(うっせェのがきた)
「学校終わったし〜、この後暇ならうちらと遊ぼうよ!!」
(まじめんどくせェな)
「うっせェな。どっか行けよ」
「そんなこと言わないでさ〜」
と、言いながら女の子が聡の腕を掴んだ。
「放せよ」
聡はバッと女の子の手を振り払った。
「きゃっ」
「ほんとクールだよね吉川君」
(なんでもいいから早くどっか行けよ)
その時、聡の目の前を1人の女の子が通り過ぎた。聡は慌てて
「おい!そこの奴!!」
と、通り過ぎた女の子に声をかけた。女の子は自分が呼ばれてるとは思っていないのか止まることなく歩いている。
(くそっ)
聡は立ち上がり、走って女の子を追いかけ、女の子の腕を後ろから掴みグイッと引っ張り女の子の歩みを止めた。
「え?」
女の子は驚いて後ろを振り向いた。
「お前..」
「...?」
「お前俺の女になれ」
「...」
女の子は訳がわからずポカンと聡をみつめている。
「おい!聞いてんのかよ!!」
「え?」
「だから、今日から俺の女になれ!!!」
と、聡はもう1度繰り返した。
「...え?私???」
「あぁ」
「!!?え??」
女の子は混乱した。聡の周りにいた女の子達は
「え!?何で?」
「え〜〜!付き合うなら私が付き合うよ!!」
と、ガヤガヤ騒ぎだした。
「うっせェな!俺はこいつに言ってんだよ」
と、言い聡はまだ混乱してる女の子を見た。
「で、お前はどうなんだよ?」
「えっと...」
「ま、お前に拒否権はねェけど」
「あの...でも...」
「って事で彼女できたし、もう俺にかまうなよ」
と、女の子達に言い残し、混乱する女の子を引っ張ってその場から立ち去った。残された女の子達は信じられないという目で聡達の後ろ姿を見ていた。
聡に引っ張られてた女の子はしばらく歩くといきなり立ち止まった。女の子の腕を掴んでいた聡もつられて立ち止まった。
「あ、あの...さっきのは...冗談?」
女の子は恐る恐る聡に訊いた。聡は振り返り女の子と向き合った。
「本気」
「でも...」
「俺の事嫌い?」
「そーじゃないけど...」
「んじゃいいじゃねェか」
「そーゆうわけには...」
「お前名前は?」
聡は女の子言葉を遮って訊いた。
「え?」
「名前」
「山川奈緒(やまかわなお)」
「奈緒ね。俺は吉川聡」
「吉川君...」
「違う。聡」
「え?」
「聡」
「さ..聡...君」
「君いらねェし」
「...聡」
奈緒は恥ずかしくて顔が赤くなった。
(こいつすぐ顔に出んのな。真っ赤(笑))
「ま、これからよろしくな奈緒」
と言い聡は教室に戻っていった。まだ混乱中の奈緒はぽつんと裏庭に佇んでいた。
(えっと...付き合う...?私と...?からかってんのかな?あんなにモテるんだから私じゃなくても......やっぱからかってる??)
考えれば考えるほど奈緒はわからなくなっていった。
(もう一度ちゃんと確認しとこう)
奈緒は聡を追って教室に行く事にした。

その頃教室に着いた聡は...。机に腰掛け友達の上原尚人(うえはらなおと)を待っていた。
(おっせェな尚人)
とそこへ
「お待たせ〜」
と言いながら尚人がやってきた。
「おっせェよ尚人」
「悪るい、悪るい」
「ったく。帰るぞ」
「おー」
聡は立ち上がり鞄を持った。その時
「ちょっと待って!」
と、ドアの方から声がした。聡と尚人はドアの方を見た。するとそこには奈緒がいた。
「あれ?奈緒?」
と、尚人が奈緒に声をかけた。
「尚人?」
「は?お前ら知り合い?」
聡は奈緒と尚人に訊いた。
「おー。幼馴染み」
「まじ!?」
聡は驚いた。
「おー。てか、お前に言った事あると思うぞ」
「いつ?」
「いつだったかな?ま、聡は女の子に興味ないから覚えてないんだろ」
(やべェ∪全然覚えてねェ∪)
「そんなことよりどうしたんだ奈緒?」
「ちょっと吉川君に用があって」
「ぶー!」
「え?」
「聡」
「さ、聡...」
「よし。で?」
「さっきのって...」
「まじ。って事で俺は帰るぞ」
聡は下駄箱に向かい歩き出した。
「ちょっと!!」
「よくわかんねーけど、とりあえず俺達も帰ろーぜ」
「...わかった」
3人は帰路に着いた。奈緒と尚人は何やら話しながら歩いている。
「聡と何かあったのか?」
「...なんか付き合うことになった...」
「は?」
尚人は驚いた。
「何で急に?」
「私にもよくわかんない」
「聡が言ったのか?」
「うん..」
「....」
「やっぱからかれてんのかな...?」
「いや、それはないと思う」
「え?」
「聡が冗談でそんな事言うと思えねーし」
「じゃぁ...」
「ま、本気なんじゃねーの」
「でも...私の事よく知らない感じなのに...」
「んー俺もちょっと驚いてんだよ」
「ん?」
「聡ってさめちゃくちゃモテんのに、誰とも付き合おうとかないし、むしろ女の子に冷たい感じで興味ないんだって思ってたからさ」
「そーなんだ...」
「でも、いいやつだからって俺に言われなくても奈緒はわかってるか」
「うん..尚人の友達だし、悪るい人とは思ってないけど...」
「それにお前聡の事気になってただろ?」
「な、何でわかるの!?」
「そりゃー何年一緒にいると思ってんだよ。それにお前顔にすぐ思ってる事出るし」
「そんなに?」
「おー」
「...」
「ま、嫌なら断ったら?聡だってそこまで無理強いはしないだろ」
「でも、なんか訳ありなのかなって...」
「んじゃ、付き合ってみたら?」
「...うん。」
奈緒はふっと前を向いた。すると前を歩いてたはずの聡の姿がなくなっていた。
「あれ?聡は?」
「あー、あいつん家さっきのとこ曲がるから」
「何も黙って行かなくてもいいのに...」
「まぁ言う必要もないと思ったんじゃねーの」
「...そんなもんなのか」
「ん?」
「聡にとって私はそんなもんなのかなって...」
「まー、付き合いだしだばっかだし、あいつもどー接していいのかわかんねーのかも」
「そーかな...」
「そーだって!あんま気にすんなよ」
「ん...」
尚人は奈緒を家まで送った。
「ありがと」
「どーいたしまして。んじゃ明日な」
「うん」
尚人は家には帰らずある所へ向かった。しばらく歩いて尚人はマンションの一室の前にいた。尚人はピンポーンとチャイムを鳴らした。すると中から
「はい?」
と聡が出てきた。
「尚人?」
「ちょっとあがってい?」
「おう」
「おじゃま」
と言い尚人は部屋の中に入っていった。2人はソファーに腰掛けた。
「で?用事って?」
「お前奈緒の事どー思ってんの?」
「は?」
「まー、好きって感じではねーんだろ?」
「んな事は...」
「いや、誰が見たって好きって感じには見えねーだろ」
「...」
「なんかわけありなのか?」
「いや...」
(ただのうっせェ女避け...なんて言えねェ...∪)
「まー、お前がひどい事するとは思ってねーけど、奈緒を泣かせたら許さねーよ」
「お前奈緒の事好きなのか?」
「ん〜、好きだったかな」
「は?」
「今は違う奴が気になんだよ」
「誰?」
「秘密」
「んだよそれ」
「まー、それは置いといて。とにかく奈緒を泣かせんなよ」
「ん」
と聡はやる気無さげに返事をした。
「んじゃ俺は帰るわ」
と言い尚人は立ち上がった。
「は?お前何しに来たの?」
「だから奈緒の事だよ」
「それだけ?」
「そー。んじゃな」
尚人は帰っていった。
(幼馴染みってだけでそこまですんのか?ホントはまだ好きとかか?)
と聡は1人で思っていた。

ーーーーーー次の日(4月8日)ーーーーーー
学校は午前授業で終わり、放課後...。
「奈緒帰るぞ」
と、聡は奈緒にぶっきらぼうに言った。
「え?」
「早く用意しろ」
「何で急に?」
「付き合ってんだから一緒に帰ったっていいだろ」
「...いーけど」
(とりあえず疑われェように彼氏彼女しねェとな=∃って、一応付き合ってんだから大丈夫か?)
「行くぞ」
と、言い聡は下駄箱に向かい歩き出した。
「ちょっと待って」
奈緒は慌てて帰る用意をし、聡の後を追いかけた。奈緒が下駄箱に着くと聡はすでに靴を履いて玄関で待っていた。その周りには女の子が数人いた。
「ね〜吉川君〜〜緒に帰ろ〜」
「むり」
と、聡はきっぱりと断った。
「なんでよ〜?」
「彼女待ってっから」
「あの噂ホントだったの?」
「え?何?」
「あんた知らないの?」
「吉川君彼女できたって」
「え!!?知らない!!ホント吉川君?」
(まじうっせェ奴らだな=∃)
「まじだって=∃」
聡は面倒くさそうに答えた。
「え〜〜!!ショック!!」
「でも、聞いた話だと彼女と仲良いわけじゃないんでしょ〜?」
「じゃぁ私たちにも入る隙があるんだ!!」
女の子は嬉しそうに言った。
「ねェし」
「そんなのわかんないじゃ〜ん!!」
「彼女来るからどっか行けって=∃」
「え〜〜!!い〜じゃん!!」
「誤解されたくねェんだよ」
と、そこへ
「別にしないから大丈夫だよ」
奈緒がやってきた。
「お前遅ェよ」
「勝手に一緒に帰るって言ってササッと行っちゃったのは聡でしょ」
「ま、なんでもいいから帰るぞ」
聡は再びササッと歩き出した。
(もー!!何で置いてくのさ!!)
「待ってって!!」
奈緒は慌てて聡の後を追った。その場に残された女の子達は...。
「あれが吉川君の彼女?」
「みたいね」
「なんか普通だね」
「てか、吉川君あの子の事好きって感じじゃなくない?」
「だよね〜」
と、陰口を言っていた。帰路についた聡と奈緒は...。聡が先を歩き、奈緒が聡の後を数歩あけて歩いていた。
(一緒に帰るとか聡いったい何考えてんだろ??私の事好きって感じじゃないのに......このまま付き合ってて好きになんてなってもらえるのかな...)
と奈緒はいろいろ考えながら歩いていた。するといきなり
「危ねェ!!」
と聡の声が聞こえ腕をグイッと引っ張られた。