「ただいまー。」

 玄関を開け、靴を脱いでリビングのドアを開けると、櫻子姉ちゃんがいた。
 
 「おかえりー!」

 櫻子姉ちゃんはラフな格好でテレビを見ていた。

 「ねぇ、お姉ちゃん。」

 「ん?どした?」

 「恋するって、どんな気持ち...?」

 ふと、今日ずっと思ってたもやもやを櫻子姉ちゃんに聞いてみた。
 櫻子姉ちゃんはびっくりした顔でこっちを見ている。
 すると、我に返ったかのようになり、口を開いた。
 
 「恋っていうのは、人によって感じ方とか違うけど、だいたいは、ドキドキするとか、安心するとか、苦しくなる、とか。そんな感じ。私もそうだよ。」

 ニッと自慢げに笑って答えてくれた。

 「でも、どうしてそんなこと聞いてきたの?」

 「えっとね...。その、最近...碧を見ると、ドキドキしたり苦しくなったり安心したりするの...。だからこれは恋なのかなって思って、ずっと悩んでたの。
 
 「...っぶ....あははははは!!!」

 櫻子姉ちゃんは、突然の大笑い。
 なんで!?

 「ひどい!真剣に悩んでたのに!!」

 「いやぁ...だって。」

 「だって?」

 「楓心、まだ気づいてなかったのかー!って思ってさ。」

 「まだって、どういうこと?」

 まだ気づいてなかった...って櫻子姉ちゃんにはもう気づいてたってこと?

 「楓心は最近ずーっと碧のことばっかり見てたし。もうこれは恋する乙女だなってずっと思ってたよ?」

 「....そうなの?」

 私は、碧のことが「好き」なんだ。
 これが「恋」なんだ。
 
 そう思うと、顔が真っ赤になってしまった。

 「楓心、初恋なんだねぇ...。ふふっ。純粋でいいわぁ...!」

 キラキラした目で見てくる櫻子姉ちゃんの視線も恥ずかしかった。
 
 「ちょ、ちょっと着替えてくる...!!!」

 私は走って自分の部屋に向かった。

 バタン。

 「はぁ...はぁ...。」

 碧のことを意識しちゃう。
 ずっとそばにいてくれて、私を守ってくれた碧。
 地味な私を嫌わずに受け入れてくれた碧。
 
 そんな碧に私は恋をしたのだった。