「はああああ〜〜。」


トイレの鏡を見ながらため息をつく。


高校生になったら自動的に彼氏ができると思ってたんだけどな〜。

やっぱり漫画や映画みたいにはいかないよね。



「え〜一緒になんて帰れないよ〜〜♡」


「いいじゃん、せっかく彼氏できたんだし満喫しないとー!」


うそ、トイレでもこの話?
もう勘弁してよー!と、思った矢先


話していた2人が話しかけてきた。



「あ、美桜じゃん。」



「ほんとだ、鈴とともは?」


2人は同じクラスの奈泉(ナミ)ちゃんと菜穂佳(ナホカ)ちゃん。


入学して間もない頃はこの2人と私たちでよく5人一緒にいたが


この2人は気が強く、悪口が絶えなかったため
私たち3人とこの2人に分裂していまに至る。


特に気まずいわけではないが、主に奈泉ちゃんの事が私たちは苦手である。


「2人は教室ではしてるよ。」



そう言うとふぅ〜んと、どうでもよさそうに手を洗い、鏡を見て髪を整え始めた。




奈泉ちゃんには3日前くらいのつい最近に
1つ上の2年生の野球部の彼氏ができた。


もともと人を見下したいタイプの奈泉ちゃんはそれを皆に自慢げに話し、付き合ってからはずっと機嫌がいい。


…だから当分こっちに危害が加わらなくてありがたい。


そんなことを考えていると奈泉ちゃんが口を開いた。


「そういえば、友も もうすぐ付き合えそうなんでしょ?ともが付き合っちゃったら彼氏いないの5人の中で美桜と菜穂佳だけになるね〜」



嫌味だ。まあ、もう奈泉ちゃんはこう言う子だと割り切っている。


「欲しいね〜、ほんと。ね、美桜ちゃん」


こう言う菜穂佳ちゃんは同中の男子ととっても仲が良いので特に彼氏なんかはいなくても充実しているように見えるが、

本人は欲しがっている。



「ほんと、頑張らないといけないね〜笑」


そう言いながら逃げるようにトイレから出た私は、教室に向かって廊下を歩いた。