「ゆっくりしてください。 お先に。」 たくさんの意を持つ言葉に呆然としたまま あたしは今朝上手く仕上がらなかったマスカラが今更絡まる事に気が付く。 「おのこしはあきまへんでー」 そういって彼はまた靨を見せて去ってった。 カラカラと小気味よい引き戸が ぴしゃん、 軽やかに閉まる、軽やかに。 「…あきまへんで、やったっけ……」