「ねえ、黒川。クリスマスはどうしてるの?」
「特に」
重苦しい雰囲気をどうにかしようとしたのか、そんなことを聞いてきた。
クリスマスも正月も、ゴールデンウイークだって、夏休みだって、私の生活には何の関係もない。ただ、仕事が休みになるだけだ。ただ、ケーキやチキンを買って、自分なりのクリスマスをする、それはしていた。それ以外は何もない。
誰にも邪魔されずに、自分のしたいことをして、過ごす。それだけだ。
「俺も診察があるんだけど、終わったらちょっと会わないか? 少しだけでいいんだけど」
こんな風に助けて貰った日に誘われて、嫌とは言えない。橘君はずるい。
でも、橘君は交際している女性はいないのだろうか。クリスマスは、恋人たちの一大イベントのはずだ。
「分かったわ」
「俺の番号、登録してないだろ。診察が終わったら連絡するから、登録して。ほら、携帯だして」
やっぱりお見通しの橘君だ。私は、仕方なく携帯を出す。そして言われた通りに番号を登録した。
「落ち着いた?」
「うん、本当にありがとう」
「いいよ、黒川を守れて良かったよ、カッコ悪かったけど」
「そんなことない、本当に」
「そう? もう、夜は出るなよ、いい?」
「うん」
「じゃあ、帰るね」
「気をつけて、ありがとう」
往診の鞄を持って、玄関に行く。
橘君は、軽く手を挙げて、アパートを出て行った。
私は、抱きしめられた感触を思い出す。そして、いけないと、自分の気持ちを抑える。
これ以上深入りしてはダメ。そう何度も言い聞かせた。
「特に」
重苦しい雰囲気をどうにかしようとしたのか、そんなことを聞いてきた。
クリスマスも正月も、ゴールデンウイークだって、夏休みだって、私の生活には何の関係もない。ただ、仕事が休みになるだけだ。ただ、ケーキやチキンを買って、自分なりのクリスマスをする、それはしていた。それ以外は何もない。
誰にも邪魔されずに、自分のしたいことをして、過ごす。それだけだ。
「俺も診察があるんだけど、終わったらちょっと会わないか? 少しだけでいいんだけど」
こんな風に助けて貰った日に誘われて、嫌とは言えない。橘君はずるい。
でも、橘君は交際している女性はいないのだろうか。クリスマスは、恋人たちの一大イベントのはずだ。
「分かったわ」
「俺の番号、登録してないだろ。診察が終わったら連絡するから、登録して。ほら、携帯だして」
やっぱりお見通しの橘君だ。私は、仕方なく携帯を出す。そして言われた通りに番号を登録した。
「落ち着いた?」
「うん、本当にありがとう」
「いいよ、黒川を守れて良かったよ、カッコ悪かったけど」
「そんなことない、本当に」
「そう? もう、夜は出るなよ、いい?」
「うん」
「じゃあ、帰るね」
「気をつけて、ありがとう」
往診の鞄を持って、玄関に行く。
橘君は、軽く手を挙げて、アパートを出て行った。
私は、抱きしめられた感触を思い出す。そして、いけないと、自分の気持ちを抑える。
これ以上深入りしてはダメ。そう何度も言い聞かせた。



