「じろじろ見るつもりはなかったんだけど、黒川の部屋、かわいいな」
「え?」
私は、こんな性格だが、ナチュラルな感じで、レースがついた物が好きだった。
手作りし、気に入った商品を扱っている雑貨店に通って、一つ一つ揃えてきた。
自分の内面を見られているようで恥ずかしい。
「うん、黒川らしい」
私らしい? 何も知らないのに、そんなことを言う橘君だ。何処まで、見抜かれてしまうのだろう。
「薬は?」
「あ……」
さっき飲もうとしてキッチンに置いたままになっていた。
「台所に……大丈夫、自分で行けるから」
「いいよ」
橘君は、台所に行って、コップに水を入れた。
薬を持って、またベッドサイドに戻って来た。
「はい、三錠って書いてあるよ」
「ありがとう」
「明日は、無理しないで会社、休みなよ?」
「うん」
「これ、借りていい?」
「うん」
テーブルの上にあったペンと紙を持ってそう聞いてきた。何に使うのだろう。
「はいこれ。俺の携帯の番号とアドレス。具合が悪くなったら電話してよ。遠慮しないでいいから。わかった?」
私は、返事が出来なかった。人に頼らずここまできた私は、どういう場面で人にお願いをするのか分からない。
今なら、具合が悪い。食べる物もない。じゃあ、我慢するか、買いに行くかの選択だ。だけど、橘君がこうしていてくれ、買い物をしてきてくれた。そして「困ったことがあったら」と電話番号を教えてくれた。
だから、電話をすればいいのか。でも、それはきっとしない。
それは橘君の好意に背くことで、口には出せない。私は、頷くだけにした。
「じゃあ、俺、帰るよ? いい? 本当に電話してよ?」
「いろいろと、ありがとう」
「じゃあな」
そう言って、私を寝かせると、布団をかけてくれた。
モモの様子を見て、玄関に行く橘君を見送ることも出来ず、私は、申し訳なく思う。
静かにドアが開いて、閉まった。この時、私は、初めて寂しいと感じた。
「え?」
私は、こんな性格だが、ナチュラルな感じで、レースがついた物が好きだった。
手作りし、気に入った商品を扱っている雑貨店に通って、一つ一つ揃えてきた。
自分の内面を見られているようで恥ずかしい。
「うん、黒川らしい」
私らしい? 何も知らないのに、そんなことを言う橘君だ。何処まで、見抜かれてしまうのだろう。
「薬は?」
「あ……」
さっき飲もうとしてキッチンに置いたままになっていた。
「台所に……大丈夫、自分で行けるから」
「いいよ」
橘君は、台所に行って、コップに水を入れた。
薬を持って、またベッドサイドに戻って来た。
「はい、三錠って書いてあるよ」
「ありがとう」
「明日は、無理しないで会社、休みなよ?」
「うん」
「これ、借りていい?」
「うん」
テーブルの上にあったペンと紙を持ってそう聞いてきた。何に使うのだろう。
「はいこれ。俺の携帯の番号とアドレス。具合が悪くなったら電話してよ。遠慮しないでいいから。わかった?」
私は、返事が出来なかった。人に頼らずここまできた私は、どういう場面で人にお願いをするのか分からない。
今なら、具合が悪い。食べる物もない。じゃあ、我慢するか、買いに行くかの選択だ。だけど、橘君がこうしていてくれ、買い物をしてきてくれた。そして「困ったことがあったら」と電話番号を教えてくれた。
だから、電話をすればいいのか。でも、それはきっとしない。
それは橘君の好意に背くことで、口には出せない。私は、頷くだけにした。
「じゃあ、俺、帰るよ? いい? 本当に電話してよ?」
「いろいろと、ありがとう」
「じゃあな」
そう言って、私を寝かせると、布団をかけてくれた。
モモの様子を見て、玄関に行く橘君を見送ることも出来ず、私は、申し訳なく思う。
静かにドアが開いて、閉まった。この時、私は、初めて寂しいと感じた。



