ピュア・ラブ

何をいっているのだろう。
私程つまらない人間はこの世に存在しない。会話などもっての他だ。
いつもの姿勢を崩さず、ただ、橘君の足元を見ていた。
病院で履いているのはクロックスらしい。色々な絵のボタンをつけて、派手になっていた。
私は、その一つ一つの絵を見ながら話を聞いた。
なんでも自分で調べ、頭に入れる。それは、一人で生きていくための知恵だ。
人は一人では生きて行けないなどと、きれいごとを言っているが、そんなことは嘘だ。自分で金を稼ぎ、自分が生きていくために使う。そこには第三者は存在しない。
孤独以上に辛いことはないと言うが、私はそれ以上の辛い生活をしてきた。一人になった今は、とても充実している。
モモを助けた橘君は、獣医が職業だからだ。
私だって具合が悪くなれば、病院に行く。歯医者だって行く。それは「一人で生きて行けない」ことにはならない。
医師は、病人を助けるのが仕事だからだ。

「俺より知識があるんだろうな、黒川は。話をして、いろいろ俺に教えて欲しい」

やめて、私の領域に入り込まないで。
とにかく今はモモだ。モモが完治をすればいいのだ。これ以上関係を持つと、碌な事がない。私は、頭を下げ、自転車に乗った。