ピュア・ラブ

モモにどうしても会いたい気持ちを抑え、仕事の休みである土曜日を待った。
夜に病院に行くと、橘君に会ってしまう。もう心を読まれたくない。
昼間はお父さんが診察していると言っていた。

「よし、会いにいこう」

木曜日の休診日があり、二日ぶりにモモに会う。子猫の時は見違えるように成長をする。たった二日だが、どれだけ傷が治り、成長したのか。楽しみだ。
仕事では一つに縛っている長い髪を下し、ブラッシングをする。
鏡に向かっている私は、恋人にでも会うように心弾んでいた。
暑い日差しで肌がヒリヒリしてしまう。肌が弱い私は、すぐに赤くなってしまう。
朝の洗濯と掃除を終えて、病院に向かう時には10時になっていた。
モモに会って、帰りにスーパーに寄ったら、食材を買って家に戻る。
そんな予定を立てながら、自転車を漕ぐ。
病院について自転車を止めると、声をかけられた。

「黒川、おはよう」

会わない様にするために午前中に来たのに、何故、橘君がいるのだろう。
病院着を着て、ゴミの袋を持って勝手口なのだろうか、自転車置き場の直ぐ横から出てきた。

「おはようございます」

挨拶も面倒なくらい、会話をしたくないのに、話し掛けないで欲しい。
義務的な挨拶を済ませ、自転車のカゴから、トートバッグを持って、病院に入ろうとすると、またしても声をかけられた。

「夜の診察のはずなのに、なんで昼間にいるの? って聞きたいでしょ」

その通りだけど、私は、分かりやすいのだろうか。

「土日はね、研修に行っている病院が休みなんだよ。だから、実家のこの病院にいるわけ」

結局、モモがこの病院に通院している限り、橘君とは関係が切れないと言うわけか。