私の過去を知っている。
高校のクラスメイトさえ名前も顔も覚えていないのに、私の過去を話すこの男は、一体誰?
私は、言葉が出ないまま、獣医である男をじっと見つめた。
「覚えていないかもしれないけど、俺、同じ高校で三年間同じクラスだった橘、橘 光星。成績がそんなにいい方じゃなかったから、特進クラスでは必死だった。一点でも下がれば、クラスが変わっちゃうから。黒川さんの隣の席になったこともあったんだよ?」
彼は人懐っこい笑顔でそう言った。
それは隣に誰か座るだろう。クラスメイトは35人いたのだから。だけど、私は、誰一人として、名前は覚えていない。いや名前だけじゃない、顔さえ碌に見ていないので記憶にない。先生の名前は重要だ。それ以外はどうでもよかった。
クラスメイトとは話したこともない。一番窮屈だったのは、文化祭や体育祭などと言った行事だ。誰も私の存在を意識していなかったから、学校生活は快適だったが、こういう時が困った。
私は、担任に言って、一人で出来る裏方の仕事を回して貰った。
遠足や、修学旅行は家庭の事情といい、参加しなかった。
私は、一瞬にして、面倒になった。
モモはこの病院に連れて来てしまったからには、退院までお世話にならなくてはいけない。
退院するまでの間に、違う動物病院を見つけておかなくてはいけない。
私は、いつものように顔を下に向けた。
高校のクラスメイトさえ名前も顔も覚えていないのに、私の過去を話すこの男は、一体誰?
私は、言葉が出ないまま、獣医である男をじっと見つめた。
「覚えていないかもしれないけど、俺、同じ高校で三年間同じクラスだった橘、橘 光星。成績がそんなにいい方じゃなかったから、特進クラスでは必死だった。一点でも下がれば、クラスが変わっちゃうから。黒川さんの隣の席になったこともあったんだよ?」
彼は人懐っこい笑顔でそう言った。
それは隣に誰か座るだろう。クラスメイトは35人いたのだから。だけど、私は、誰一人として、名前は覚えていない。いや名前だけじゃない、顔さえ碌に見ていないので記憶にない。先生の名前は重要だ。それ以外はどうでもよかった。
クラスメイトとは話したこともない。一番窮屈だったのは、文化祭や体育祭などと言った行事だ。誰も私の存在を意識していなかったから、学校生活は快適だったが、こういう時が困った。
私は、担任に言って、一人で出来る裏方の仕事を回して貰った。
遠足や、修学旅行は家庭の事情といい、参加しなかった。
私は、一瞬にして、面倒になった。
モモはこの病院に連れて来てしまったからには、退院までお世話にならなくてはいけない。
退院するまでの間に、違う動物病院を見つけておかなくてはいけない。
私は、いつものように顔を下に向けた。



