ピュア・ラブ

そう言いながら、鈴を何度か鳴らした。
すると顔の前に影が出来て、太陽の眩しさから解放される。誰?と思う間もなく私は、その陰に抱きすくめられた。

「ただいま」

その声は、忘れたくても忘れられず、あきらめようとしても諦められなかった人だ。
とめどもなく流れる涙は、うれし涙なのだろうか。
抱きしめられていた腕の力が抜け、体が自由になると、顔を両手で包み込まれた。

「ずっと君が好きだった」

ずっと聞きたかった懐かしい声で、そう言われた。
顔が近づき、私の唇に唇が重なる。
モモの尖った口とは違い、暖かく、柔らかかった。
初めての口づけは、彼の優しさが加わっていた。
離れ難さに私は、腕を伸ばして、抱きしめる。
周りなど気にならなかった。どうしてここに私がいることが分かったのか。聞きたいことはたくさんある。でも、そんなことはどうでもいい。
重ねた唇からはコーヒーの香りがした。
直前まで飲んでいたに違いない。私と一緒だ。
海の波の音が聞こえる。
人の温もりと言う物を始めて感じる。人は温かい。それも教えてもらう。
はがきの本当の最後は今だったのだ。
今まで返すことのなかった彼のはがきに、私は思いを込めて返事を出そう。


                             ~FIN~