「少し見習ったらどうだ?」



 心からそう思う。



「私だって、しとやかにできるさ。そういえば、小夜のほうがお前が付き合ってきた、いや、遊んでいた女に近い綺麗系じゃないか」



「瀬戸は友人だ。手なんか出すか。俺はやましいことは何もしていないんだから強制送還されるいわれもないぞ」



「強制送還のためにお前に会いたかったわけではないぞ。可愛い弟の恋の応援に私はこんなに心も砕いているのに。小春に惚れている。そうだろ?」



「姉貴がそう思う根拠はなんだ?」



 さぐりを入れる。


 ごまかせるかどうかの判断が必要だ。



「広也の話と、この写真だな」



 そう言うと、手帳から一枚写真を引っ張り出しひらひらと摘んでみせた。


 さっと、奪い取り写真を見る。


 広也、お前は本当に殺されたいらしいな。


 口元が引きつった。



「なかなか可愛い子じゃないか。お前が、男受けする王道タイプが好みだったとはな。てっきり私みたいな年上美人がタイプだと思っていた」



 何が、私みたいな年上美人だ。


 そんなのとは近づきたくもない。



「しかし、お前も意外と顔に出るな。惚れてるのが丸わかりだ」



 菩薩のような笑みで姉貴は微笑んだ。


 からかう様子もない。


 だから姉貴は苦手なんだ。



「それが?人の恋路を邪魔するな」



 こうなったら開き直るしかない。



「小春に興味があるんだ。お前に片思いさせるなんて、想像するだけで面白い。他でもないお前が片思いだなんてな。俊」



 くく、と笑い、悪びれる様子もない。