だが、声の主は上原だった。


 嫌な予感がして、慌ててドアを開けた。



「小春がいないの。いつの間にか部屋抜け出したみたい」



 まさか。


 また同じことをやらかすなんてことは。


 いや、あの馬鹿ならありえる。



「俺は外見てくる。見つかったら連絡しろ!」



 コートに携帯を突っ込み、走り出す。


 深夜の廊下に、俺の走る音だけが響き渡る。


 あんなのはほっとけば良い。


 雪に埋もれたって知ったことか。


 自分の意思でそうしてるんだから助ける必要はない。


 これこそ、水野のおせっかいと一緒じゃないか。


 死にたいなら勝手に死ね。


 だが、走らずにはいられない。


 きっと、水野と一緒にいたせいでおせっかい病がうつったんだ。


 そう思いたい。


 だけど、嘲笑うのだ。


 違うだろと。


 そう、自分をどこかで嘲笑う。


 冬だというのに嫌な汗が出る。


 ひどく焦っている。


 惚れているから、救ってやりたいと思ってる。


 嫌われているのに、どうしようもなく惚れている。


 全速力で走っているのに、やけに遅く感じられた。